BoC(カナダ中銀)は7月利上げに踏み切る見込み
カナダは7月11日のBoCで利上げを発表する見込み
カナダのCPI統計(5月分)や雇用統計、小売売上高を見たときは、これでBoCの7月利上げはなくなったかなと思いましたが、6月のFOMCの利上げに追随して、BoCも7月の利上げを実施しそうな状況になってきました。
7月6日に発表された米国の雇用統計は、雇用者数は前月比21.3万人増と、市場予想の19.5万人を上回りました。しかし、時間当たり平均賃金は前月比0.2%と市場予想の0.3%を下回っています。失業率は3.8%から4.0%に上昇していますが、求職者数の増加によるもので、悪化ではありません。賃金の数値が予想を下回ったことは利上げペースが加速せずに緩やかなペースで進むとの見解につながったようで、全体として安心感につながりました。
7月6日はアジア時間から、米中の貿易関税の発動を受けてどのような新情報で出てくるか神経質な状態でしたが、結果として安心感のある相場展開となり、米国の雇用統計発表後は株式市場も安定して推移しています。
最近では米中貿易関税、米国のイールドカーブがフラット化してきたことから株式市場の先行きに関して悲観的な見方が増えてきたように思います。
米国の利上げペースがどこまで続くのか、私も懐疑的に見ています。どこかのタイミングで利上げペースを維持できなくなりますので、今後1年程度で利上げ終了の時期を警戒しながら見ていくことになると思っています。
米国に追随して利上げを進めるカナダについても同様の状況でしょう。
7月6日時点で、米国のイールドカーブは10年-30年はまだフラットニングの余地が25bpあります。5年-10年が15bp、2年-10年が38bpと、いずれも長期的にはフラットニングしている状況と言えますが、逆イールドという状況にはもう少し距離があります。
一方で、カナダの10年-30年は4bp、5年-10年は8bp、2年-10年は12bpしかありません。
もともとのイールドカーブはカナダの超長期債が極端にフラットな状況でしたので、一概には言えませんが、カナダの利上げがそれ程織り込まれていないのか、利上げの最終地点が現時点のカナダの政策金利である1.25%からそれほど遠くないと見込まれているのか、どちらかでしょうか。
BoCが利上げを進める背景
コアCPIが2%を下回り、米中の貿易摩擦は深刻度を増すばかりですが、BoCは利上げを行いそうです。
内部環境も、外部環境も明るい材料は乏しそうですが、経済の引き締まりが鮮明になっていて、中銀としては先行きのインフレを懸念せざるを得ない環境のようです。
中銀が利上げを淡々と進めざるを得ないと思わせる材料が、6月29日にBoCより発表されたBusiness Outlook Survey – Summer 2018とSenior Loan Officer Survey—Second Quarter of 2018です。
BOSはビジネス環境の楽観的な状況を示すとともに、労働環境が非常に引き締まっていること、将来のインフレ期待が高まっていることが示されていました。
Senior Loan Officer Surveyからは、住宅ローンやビジネスのどちらも借り入れが引き締まってはいない状況が明らかになっています。
住宅ローンについては、規制強化の影響で需要全体が減退し、条件を満たしている借り手に対する価格競争が背景にあるようです。対ビジネスについては、これまでの利上げの影響はほとんど観察されていません。
雇用環境が引き締まる一途であることが今回のBOSで明らかになったことで、BoCとしては緩やかに利上げを進めることは最低限必要なことだと考えるかもしれません。
カナダドルが対ドルで下落傾向にあることは、利上げを容易にしているでしょう。
7月の利上げは、5月のBoCで利上げに向かう姿勢が示されたことから自然なことかもしれませんが、その後の経済指標は弱いものばかりでした。
経済指標は足元の若干の鈍化を示したものの、労働環境の引き締まりが強まっていることは緩やかな利上げをサポートし続けると考えられますので、今回利上げして、それで打ち止めという環境でもありません。
追加利上げについては、経済環境を見極めながら徐々に利上げを進めていくというスタンスをとるのではないかと思います。