カナダの4月の雇用統計は市場予想を下回り、CPIと合わせてBoCの5月利上げの可能性は後退
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カナダの4月の雇用統計は低調な結果
5月11日に発表されたカナダの4月の雇用統計は、0.11万人の減少と、前月からほぼ変わらずとなりました。市場予想の2.0万人増を下回る結果となっています。
フルタイムの雇用者は2.88万人の増加となる一方、パートタイムの雇用者は3.00万人の減少となりました。雇用者数全体の伸びは鈍かったですが、フルタイムの雇用者が増加したことは若干ポジティブです。
4月までの12カ月の合計では、雇用者数は27.8万人の増加(+1.5%)となりました。フルタイムが37.8万人増、パートタイムが10万人減となっています。
気になるのは、1月の雇用急減は除いても、2-4月の3カ月間で平均1.55万人しか雇用が伸びていない点です。
直近12カ月の労働力の伸びが17.38万人だったことを踏まえると、失業率を大きく低下させるには至らない雇用の伸びで、2018年に入ってから雇用面での改善は鈍化しています。
カナダの3月の貿易統計は過去最大の赤字
5月3日に発表されたカナダの3月の貿易統計では、輸入の増加により単月の赤字が過去最大になったことが発表されました。
輸出も増加していますが、輸入の増加が顕著です。
NAFTAの再交渉は依然不透明な状況ですが、対米貿易黒字は足元で大きく減少しています。
5月30日のBoC会合での利上げ確率は後退
今回の雇用統計から見える雇用市場の鈍化や、市場予想を下回った3月のCPIの結果を踏まえると、次回5月30日のBoCでの利上げはないでしょう。市場の5月の利上げ織り込みは雇用統計発表前の5月10日時点で30%まで後退しているということです。
先進国は軒並み利上げ観測後退、アルゼンチンの混乱もあり、FRBの利上げペース加速はますます困難に
BOEの5月利上げ見送りに見られるように、欧州でも一旦高まっていた利上げ観測が急速に後退しています。
一方で米国は依然として6月、9月の利上げが期待されている状況で、厳しい環境下で唯一利上げ観測が残っている国となっています。
そのような環境下、対先進国通貨での米ドル高が注目されてきましたが、先進国よりも脆弱な新興国の苦境が5月初めに明らかになってきました。
ロイター:コラム:アルゼンチン緊急利上げ、通貨安に歯止めかかるか
アルゼンチンはインフレが3月までの1年で25%に達し、5月4日に40%まで政策金利を引き上げて通貨安の防衛を行わざるを得ませんでした。
FRBの利上げ観測を背景とした米ドル高が間接的に影響を及ぼしている面もあるはずですが、FRBのパウエル議長は5月8日に以下の発言をしています。
ブルームバーグ:パウエルFRB議長:新興市場、米利上げの波乱乗り切る力備えている
たしかに、これまで慎重に慎重に利上げを進めてきましたので、米国の利上げが金利の急騰を招いて市場が混乱するということはありませんでした。
FRBとしては利上げによる新興国への影響も確認しているはずで、現時点の評価としてはこれまで同様のペースでの利上げは特に問題ないと考えているようですが、今回のアルゼンチンの混乱や、欧州その他先進国の利上げ観測の後退(オーストラリアは2019年まで利上げがない見通しですし、ニュージーランドは5月10日の会合で政策金利の当面の据え置きを改めて示唆するとともに、今後の政策金利の方向について「上下どちらもありうる」との方針を示しました)を踏まえると、2018年にあと3回利上げしてペースを加速させることは、他国とのインバランスによる市場への圧力を高めることになるため、取りづらくなったのではないかと考えます。
カナダドルへの影響は
米国のみが力強い利上げ観測が残るなかで、カナダドルの対ドルレートは1.28程度で推移しています。
前回1月のBoC利上げ時には以下のとおり1.24台だったことを考えると、追加利上げ観測が後退するなかでカナダドルも対ドルで下落してきましたが、割と堅調に推移しているとの印象です。原油が70ドルを上回っていることで、カナダドルをサポートしている可能性もあります。
今後のカナダドルの展開は、NAFTAの再交渉や原油市場、新興国市場、米朝会談によるリスクセンチメントの変化によって影響を受けますが、対ドルで考えた場合、カナダのファンダメンタルズに過熱感が見られないことから、利上げ速度がBoC > FRBとなることは考えづらく、年初利上げ時の1.24を超えてカナダドルが上昇していくことは難しいのではないかと思います。とはいえ、米ドルの独歩高は新興国への圧力が懸念され、FRBの利上げペース加速も難しくなってきたことを考えると、先進国通貨の対ドルレートは全体的にレンジ推移を続けるものと考えています。
現在の市場環境を大きく変える可能性がある米朝会談が6月12日ということなので、とりあえずそれまでは大きく動きにくいですね。
1件の返信
[…] 5月のBoCの利上げは、カナダの雇用統計が低調だったことですでに期待が後…が、CPIの全体の数値の2%を上回る圧力が強くないことが観測されたほか、コアが全く予想通りであること、個人消費に弱さがみられること、NAFTAの交渉が依然として進展しないことから、いよいよ利上げは遠のいたと言えそうです。 […]