カナダ雇用統計(2018年5月)鈍化継続、7月利上げはさらに遠のく
カナダの5月雇用統計は予想外のマイナス
カナダの5月の雇用者数は、前月比7,500人の減少となりました。4月にも1,100人の減少でしたので、引き続き雇用市場の停滞が続いています。
フルタイム雇用者数が前月比31,000人減少となる一方で、パートタイム雇用者が23,600人増となっています。また、24-55歳のcore-working-agesで男性、女性ともに19,000人の減少となっていて、雇用変化の内訳からも弱いと言えます。
5月の失業率は4か月連続となる5.8%となりました。2017年12月に5.8%に低下してから同水準での推移が続いていて、今年に入ってから雇用市場は停滞しています。
労働参加率も、4月の65.4%から5月の65.3%へ低下しています。
カナダドルは発表後下落後、引けまでに持ち直す
カナダの雇用統計発表後、カナダドルは対ドルで1.29台後半から50pips程度下落して一旦1.30台まで下落しましたが、NY市場を通じてドル安の展開だったことで、雇用統計発表前の水準を大きく超えてカナダドルは上昇、6月8日は1.29台前半での引けとなっています。
カナダの利上げ期待は今回の発表でさらに後退したものと思いますが(6月8日の3カ月国債の引け値は1.25%程度で、利上げはほとんど織り込まれていない模様)、そもそも早期利上げ期待が高まっている状況でもなかったので、指標発表の影響は軽微にとどまったのでしょう。
それよりも、カナダ・ケベック州で開催中のG7サミットで米国とカナダを含むそれ以外の国の貿易関税についての対立が鮮明になっていることなどを背景にドル安に終始しました。G7で何かが進展したり混乱したりといったことは期待できないと思いますので、これまでドル高が進んでいたこともあり、いったんドル高が小休止というところかと思います。
6月12日の米朝首脳会談も日米の世論調査では大きな進展が期待できない状況ですが、不透明感を強める大きな要因であることは間違いありませんので、様子見による動きもあったものと思います。
カナダ中銀の利上げはどうなるのか
米国はよほどのことがなければ来週12-13日のFOMCで利上げするでしょう。
カナダ中銀はどうするのか。
雇用統計やCPI統計から見られるのは、他国同様カナダでも今年に入り経済が停滞しているということです。
5月末のカナダ中銀理事会では、今後の利上げについてポジティブな姿勢を見せました。声明文も明確に変化し、追加利上げをしたいようです。
利上げの方向であることは間違いないですが、経済状況を勘案すると利上げを加速させることは難しいでしょう。
カナダ中銀のスタンスとしても「徐々に政策金利の調整を進めていく」というものですので、経済指標や米国の利上げの状況を見ながら慎重に進めていくしかなさそうです。
そういった観点から、FOMCでの今後の政策金利の見通し(dot plot)がどう変化するかがカナダ中銀の動向を占う意味でも最重要な指標です。
米国の5月の雇用統計は好調でしたが、グローバルな不透明要因が増えつつあるなかで利上げペースの加速を示すことは不均衡の拡大につながってしまい困難な状況を作り出すでしょう。
米国の6月の利上げは行われるでしょうが、将来については利上げペースの鈍化が懸念される状況がくると想定しています。
カナダドルへの影響については、これまでのカナダドルを巡っては「米国の利上げを見込んでUSD/CADの上昇見通し」が強かったことを考えると、米国の順調な利上げへの懸念が強まることは、カナダドルの対ドルでの上昇要因になると思われます。その際はカナダの利上げ期待も後退するものと思いますし、カナダ中銀の利上げスタンスからしても大幅なカナダドル高は難しそうですが、米国ほどの利上げ期待がなかったことやカナダドルの通貨先物のポジションがショートに傾いていることなどから、これまでの米国利上げを中心としたUSD/CAD上昇というロジックの後退はカナダドルの買い戻しにつながるものと思います。
懸念材料はNAFTA再交渉をはじめとする貿易戦争の動向ですね。
欧州や中国の報復関税が強まり株式市場が混乱すると、増産懸念もある原油も下げるでしょうから、カナダドルの下落要因となります。
まずは、FOMCの評価をしてカナダ中銀の動向を検討しましょう。
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