ダウ急落(666ドル安)、議長交代で利上げは加速するか
ダウ急落、VIX急騰
昨晩の米国の雇用統計を受けて金融市場への圧力が高まっています。
昨日発表された2018年1月の米雇用統計では雇用者数20万人増で市場予想の18万人を上回りました。
これを受けてダウは666ドル(2.5%)も下落。完全雇用に近いといわれるなかで賃金の伸びが予想を上回ったことで、今後のFRBの利上げペースが加速する可能性が警戒され、米国10年債利回りは2.84%まで上昇、大幅株安となりました。久しぶりですね、利上げを嫌って株が下げるのは。VIXが17台まで上昇するのも久しぶりです。
ロイター: ダウ666ドル安、約9年ぶりの大幅な下げ幅 米債利回り急上昇で
1月の米雇用統計は非農業部門の就業者数が前月比20万人増と、市場予想の18万人増を上回った。賃金は前年比で2009年6月以来の大幅な伸びとなり、米連邦準備理事会(FRB)が年内の利上げペースを加速させる可能性があることが意識された。
利上げのペース加速が懸念される
市場では2018年の利上げ3回がコンセンサスとなっていたところ、今回の雇用統計と若干タカ派と捉えられた1月31日のFOMC結果を受けて、利上げペースが加速するとの警戒感が強まっています。
ブルームバーグ: FOMC:利上げ意欲、市場は甘く見ている-市場関係者の見方
為替は小幅ドル高も大きな動きなし
為替の動きはFRBの利上げ加速を織り込んで若干の米ドル高ですが、興味深いのは米ドル・円の動きです。米ドル・円は雇用統計を受けて110円台まで上昇しました。直前の東京市場では日銀の指値オペを受けて109円台後半まで円安方向で推移していました。今回のような賃金加速の雇用統計を受けて米ドル高・円安は普通のことですが、利上げを受けてダウが2.5%も下げてVIXが跳ねあがるなかで円安を保っているのはなかなかすごいです。日銀の動きで昨年のレンジ下限がサポートされた影響が大きいのかもしれません。
ブルームバーグ: ドル・円は上昇、日銀が指し値オペと長期ゾーン増額-米雇用統計待ち
FRB議長交代
イエレンFRB議長が今回のFOMCを最後に退任して、パウエル新議長が就任します。
ロイター: コラム:パウエルFRBはタカ派かハト派か
議長交代の不透明感もあって利上げ観測が加速するとのイメージが強まりやすいのかと思いますが、私は利上げペースはこれまでの市場予想通り、今年3回程度だろうと考えています。これまでは、利上げをしても株式市場が持続的に下げるようなことはなく、経済は堅調な成長を維持してきました。足元のインフレ環境からすればFRBは現状のペースでの利上げに満足しているはずで、今回の株式市場の急落でも明らかなように、利上げの加速は金融市場の不透明感を高める結果になり、雇用環境の改善に悪影響になります。FRBは自身の利上げと利上げに対する思惑で金融市場のボラティリティが高まることは(先行きが不透明になることで見通しが立てづらくなり、利上げをしづらくなるので)嫌っていると想定されますので、これまでどおり、緩やかなペースでの利上げを徐々に市場に織り込ませて、市場への影響を小さくしつつ利上げを進めていくと思われます。
イエレンさんも以下のようにコメントしていて、恐らくは現在のプロセスが踏襲されるでしょう。
ブルームバーグ: イエレンFRB議長:再指名を逸したことへの失望感を告白-PBS
イエレン氏はさらに「金融当局は緩やかな利上げの軌道にあり、これまでのような状況が続けばこのプロセスは継続する公算が大きい」と指摘した。
それにしても、FRBの副議長、議長を務め、議長在任の4年間で米国の失業率を2.5%も低下させて、労働市場は完全雇用が心配されるほどの状況、インフレは低位で安定していて株価は最高値を更新して絶好調、大規模な金融緩和からの正常化を適切に進めてきたイエレンさんを退任させて失望させるなんて、なんというひどい仕打ちでしょう。理解できません。