IMF 世界経済見通し上方修正(2018年1月22日発表の修正値)
IMF世界経済見通し上方修正
IMFが2018年と2019年の成長率の見通しを上方修正しました。
米国の税制改革の効果を見通しに反映させたことで、先進国の成長率見通しが軒並み上方修正され、世界全体では2018年と2019年に0.2%ずつ上方修正され、それぞれ3.9%の伸びと、2017年を若干上回る安定した成長が続くとの見通しが維持されています。米国の税制改革は2020年までに同国経済を累計で1.2%押し上げる効果があるとのことですが、2022年以降は拡大した財政赤字の調整などで見通しが引き下げられているようです。
米国の成長率見通しが2017年10月時点から2018年で0.4%、2019年で0.6%も上方修正されています。これを受けて貿易相手国のカナダ、メキシコも恩恵を受けるとして上方修正されていて、カナダの2018年の成長率は0.2%、2019年は0.3%の上方修正となっています。日本も2018年が0.5%、2019年が0.1%上方修正されていて、米国の税制改革、財政政策による貿易への効果や足元の景気の好調さが持続する効果などが反映されているようです。
(表)世界経済見通しの修正後成長率と今回の修正幅(%)
推計 | 見通し | 2017年10月 見通しとの差 |
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2017 | 2018 | 2019 | 2018 | 2019 | |
世界GDP | 3.7 | 3.9 | 3.9 | 0.2 | 0.2 |
先進国 | 2.3 | 2.3 | 2.2 | 0.3 | 0.4 |
米国 | 2.3 | 2.7 | 2.5 | 0.4 | 0.6 |
ユーロ圏 | 2.4 | 2.2 | 2 | 0.3 | 0.3 |
ドイツ | 2.5 | 2.3 | 2 | 0.5 | 0.5 |
日本 | 1.8 | 1.2 | 0.9 | 0.5 | 0.1 |
カナダ | 3 | 2.3 | 2 | 0.2 | 0.3 |
その他先進国 | 2.7 | 2.6 | 2.6 | 0.1 | 0.1 |
新興国・発展途上国 | 4.7 | 4.9 | 5 | 0 | 0 |
今回の上方修正と為替についての雑感
世界の景気はまだまだ強いんですね。カナダの成長率見通しも引き上げられましたが、これは既にBoCでも想定されていることで現状を確認する程度の意味しかありません。BoCではどちらかというとNAFTAの再交渉を警戒してやや慎重な見方を強めている印象があります。原油価格も依然として高水準で、IEAの見通しでは価格上昇を背景に石油生産が「爆発的に」増えるという見通しが示されるなど、米国には引き続きポジティブなニュースが続いています。2018年、2019年と引き続き好調な経済成長が続くとなると、この低ボラの相場がまだまだ持続してしまうのでしょうか。今回のIMFの見直し修正でもドイツを筆頭にユーロ圏も上方修正されていて、このまま世界的に好調さが持続すると金融緩和の解除が続々と続いていくのでしょう。ポンドが対ドルで1.4に到達していることも、もちろんEU離脱交渉が進展していることへの安心感が背景にあるとは思いますが、インフレ圧力が強いなかで緩やかに利上げが続くとの見通しが通貨高に表れているものと思います。
これまでは米国の景気が好調ななかで他の国が金融緩和を維持・拡大することで米ドル高が続いてきましたが、2017年には欧州を筆頭に景気の回復が目立ち、様々な問題はありつつも昨日はスペインが格上げされるなど、全体として良い方向に経済が向かっていることを反映してユーロ高、ドル安となっています。各国の金融政策が緩和維持から引き締め方向に非常に緩やかながらも転換しつつあることが米ドルの下落推し進めていて、米国の税制改革による輸入、投資拡大による効果はこの動きをさらに強める(米ドル安要因となる)のではないかと考えています。
リスクとしては、緩やかな利上げでは済まないくらいにインフレが制御できなくなることだと思いますが、世界的にコアインフレの低迷が続くなかで、少し考えにくいシナリオかと思います。万が一そうなると、急速な利上げを強いられて、株式市場への波及も避けられないところですが、そのシナリオはまずないでしょう。
米国の債券利回りが上昇を続けることで米ドルが下支えされることも言われていましたが、米国の10年国債利回りは今日2.6%台前半まで5bp程度低下しています。米政府機関閉鎖が解除されたことや日銀の金融政策決定会合を無難に通過したことを受けて買われているのか、ちょっと背景がわかりませんが、今日の債券買いの動きは力強いものを感じます。債券利回りも上がらないとなると、株は強く、債券は安定して、全体としてボラは低いという状況がまだまだ続いてしまうのでしょうか。当面は、米国債の売りが止まったのかどうか、慎重に見ていく必要がありますね。